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焼肉店にモバイルオーダーは向く?
卓上タブレットとの違いと、脂のついた手の問題

最終更新: 2026年8月31日

焼肉店は、細かな注文が何度も発生する業態です。そのたびに店員が席まで向かうため、画面で注文を受けられるようになれば、その往復は大きく減ります。ただし、この業態では卓ごとにタブレットを置く形式がすでに定着しています。加えて、焼いている最中のお客様の手は脂で汚れがちです。この2つを考えず、「追加注文が多いから向いている」とだけ捉えると、導入後に想定との違いが出てきます。

1. 注文が細かく、何度も起きる

焼肉の注文は、最初の一度で終わるものではありません。まず盛り合わせとドリンクを頼み、焼きながらタンをもう一皿、ハラミを追加。途中でご飯とキムチ、締めに冷麺かビビンバ、最後にアイスを頼むこともあります。1卓で5回も6回も呼ばれることがあります。

呼ばれる回数が多い点では居酒屋と同じですが、焼肉には呼びにくい事情が重なります。焼いている最中は、トングと箸で両手が塞がっています。換気の音や肉が焼ける音で、声も通りにくくなります。焼肉店に昔から卓上の呼び出しボタンが付いているのは、手を挙げて店員と目が合うのを待つ方法が、この業態ではとくに成り立ちにくいためだと思います。

席の画面から頼めれば、店員を呼び、注文を伝えるための往復はなくなります。

焼肉ならではの効果もあります。網の上が空きそうになった時点で次の料理を頼めるため、肉が届くまでの間が短くなります。呼んで、伝えて、運ばれてくる。この3段階が2段階になるだけですが、焼肉では網が空いている時間がそのまま手持ち無沙汰につながるため、体感の差は小さくありません。

ただし、これだけで客単価が何割上がる、とまでは言えません。売上が増えたという話は聞きますが、価格設定や客層によって結果は変わります。確かなのは、頼みそびれが減ることです。

2. 卓上タブレットとの違い

焼肉のチェーン店に行くと、たいてい卓にタブレットが付いています。写真が大きく、部位の説明を読めて、レジまでつながっている。よくできた道具です。同じ形を個人店で実現しようとすると、卓数ぶんの端末を用意する必要があります。20卓なら20台です。

席のQRは、その端末の役割をお客様のスマホに担ってもらう仕組みです。比べる点は、おおむね次のとおりです。

比べる点卓上タブレット席のQR
端末の用意卓数ぶん必要。買うかレンタルか要らない。お客様のスマホで読む
卓を増やしたとき台数ぶん増える費用は変わらない
卓の上の場所1台ぶん占める札1枚だけ
充電と清掃店の仕事として毎日増える増えない
故障・紛失店の負担になる端末の故障は起きない。札が傷んだら刷り直す
スマホを持たない客そのまま使える口頭注文を残しておく必要がある
脂のついた手汚れても拭けばよいお客様が自分の私物を触ることになる

下の2行は、焼肉店でQRを選ぶ際に気になる点です。一方、上の5行は、卓数の少ない個人店ほど影響が大きくなります。

また、焼肉の卓はもともと狭めです。中央をロースターが占め、肉皿、タレ皿、取り皿、ドリンクで埋まります。そこにタブレットを1台置くと、置き場所に困ることがあります。この一点だけでQRを選ぶ店もあると思います。

どちらが正しい、という話ではありません。卓数が多く客単価も高い店なら、端末代を回収しやすいため、タブレットが素直な選択です。卓が10から20で、初期費用を先に抱えたくない店ならQRが向きます。費用の考え方は費用の内訳にまとめました。

3. 脂のついた手と、煙

焼肉店にQRを導入するなら、脂のついた手でも注文しやすいかを先に確かめてください。

焼いている最中、お客様の手にはタレや脂が付いています。店のタブレットであれば、汚れても布巾で拭けば済みます。しかし、自分のスマホではそうはいきません。頼みたいけれど、今は触りたくない。この一瞬のためらいで、注文が後回しになります。せっかく減らしたはずの往復が、別の形で戻ってくるわけです。

この抵抗を完全になくすことはできませんが、減らすことはできます。

煙と熱についても考えておいてください。ロースターの真上や煙の通り道にQR札を置くと、油煙で曇り、読めなくなります。卓の端や壁側のほうが長持ちします。ラミネートしてあっても油は付くため、営業後に拭ける場所に置くことが大切です。

焼肉店では、注文の何割かはこれまでどおり声で来るものと考えておくほうがよいです。すべてを画面に移そうとすると、うまくいかないことがあります。

4. 食べ放題の時間管理

食べ放題を提供している店では、時間管理をどうするかが分かれ目になります。

店が担っているのは、注文を受けることだけではありません。卓ごとの開始時刻を把握し、残り時間を確認し、ラストオーダーを伝え、時間が来たら受付を止めます。90分から120分の制限で、ラストオーダーを終了の15分から30分前に設ける店が多いようです。

画面で受けられるのは、注文だけです。卓ごとの残り時間を数え、時間が来たら注文ボタンを自動で止める。そこまで行うのはPOSレジと一体になった業務用システムの領分であり、QRを置くだけで使える低価格なサービスには載っていないのが一般的です。スグオーダーにもこの機能はありません。

構造は居酒屋の飲み放題とまったく同じなので、卓の分け方は居酒屋への導入のほうに詳しく書きました。焼肉は、食べ放題が売上の柱になっている店の比率が高い業態です。単品の卓と食べ放題の卓を分けている店なら、単品の卓から導入すれば済みます。食べ放題しか提供していない店では、残る手作業が大きく、手間が中途半端に減るだけで終わることもあります。

網の交換と炭の追加:これは注文ではありませんが、「店員を呼ぶ」ための呼び出しとして、同じ画面から受けられます。用件までは伝わらないため、席に行ってから聞くことになります。それでも、手を挙げて目が合うのを待つよりは早いです。網を替えてほしいと思うのは、たいてい手が塞がっている最中です。

5. 向く焼肉店・向かない焼肉店

単品中心のアラカルト焼肉店向く。追加注文の回数が、そのまま往復の回数になっています
ホルモン店・大衆焼肉向く。1皿が小さく、細かく頼み足す形になります
卓数10から20の個人店向く。卓数ぶんのタブレットを揃える費用が重い店ほど、差がはっきり出ます
個室・座敷のある店向く。呼ばれるまで気づけない席ほど効果があります(電波は全席で確かめてから)
しゃぶしゃぶ・もつ鍋・お好み焼き向く。卓で火を使い、具材とドリンクを何度も足す形は焼肉と同じです
食べ放題だけの店効果は限定的。時間管理が手元に残るため、減る手間が中途半端になります
すでに卓上タブレットが入っている店要りません。二重に持つ意味は薄い
カウンター数席の焼肉店向かない。声が届く距離なら、QRを挟むほうが遠回りです
部位の説明が接客の一部になっている店向かない寄り。勧めながら説明すること自体が商品なら、そこを削ると魅力が薄くなります

向かない側に当てはまっても、卓の一部だけで使う方法はあります。カウンターとコースの卓はこれまでどおりにして、テーブルと個室だけにQRを置く。全席で導入するか、しないかの二択にすると、たいていは導入しないほうへ傾きます。

6. 始めるなら、どの卓から

東京商工リサーチの集計では、2026年上半期(1月から6月)の焼肉店の倒産は26件でした。前年同期から8.3%増え、上半期としては2年連続で最多を更新しています。26件すべてが負債5000万円未満で、従業員10人未満の店が25件を占め、原因の9割近くは販売不振でした。仕入れの面も楽ではありません。農林水産省の食品価格動向調査によると、2026年7月中旬にスーパーなどで売られた輸入牛肉ロースの平均は100グラム451円で、2003年の調査開始以降でいちばん高い水準だそうです。店の仕入れとは別の数字ですが、値上げのしにくさは同じ背景から来ています。卓数ぶんの端末を先に買ってから様子を見る、という順番は取りにくい時期だと思います。

  1. 混む時間に置く:金曜土曜の19時台のような、いちばん呼ばれる時間帯に試します。平日の早い時間では、効果も問題も見えにくくなります
  2. 置き場所を先に決める:ロースターの熱と煙が当たらない位置に、手に取らず読める角度で立てます。決めずに置くと、初日で油まみれになります
  3. おしぼりの出し方を決めておく:替えを頼まれる前に置く、と決めるだけです。触ることへの抵抗は、ここでかなり下がります
  4. 口頭注文は残す:卓上に一言添えておけば、たいていの抵抗は減らせます
  5. 2週間見る:追加注文の入った卓が増えたか、注文を取りに行った回数が減ったかを確認します

導入して困ることの一覧はデメリットと対策に、券売機を含めた他の方法との比べ方は券売機との比較にまとめています。

タブレットを卓数ぶん買う前に、1卓で試せます

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見出し画像: Pixabay / joannaisabellaabril (Pixabay Content License)